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基礎講座

FIV(猫エイズ)ウィルスについて

FIVは、レトロウィルス科レンチウィルス属の感染によります。

 レトロウィルスの特徴

生物界の中で唯一逆転写酵素を持ちます。生物界のセントラルドグマ(中心命題)として、タンパク合成はDNAからRNA(m−RNAやt−RNA)へ遺伝情報が伝達さタンパク質が合成されることになっており、その逆は絶対に起きないことになっています。しかしながらレトロウィルスだけは例外です。レトロウィルスが遺伝子として持っているのはRNAです。そのRNAを寄生主の細胞の遺伝子(DNA)に潜り込ませる際に、逆転写酵素を用いてDNAを合成しています。このようなことができるのは生物界の中でもレトロウィルスだけです。                  

レトロウィルスの、もう一つの特徴は非常に早く衣替えを行うことです。たとえば抗体に遭遇すると、直ちにその抗体に対する抗原部分を変化させてしまいます。このことがワクチン作成の妨げとなっています。非常に早く変化させる部分のことを高度可変領域といいます。同じレトロウィルスでも猫白血病ウィルスはこの部位が狭く固定部位が露出していたためにワクチンを作成することができました。FIVウィルスは、この部分が広く固定部分が少ないためにワクチン作成に手間取っています。              

余談:人のエイズウィルスが無害化に向かっていることは有名な話です。ウィルスにとって上手な寄生方法とは、宿主を殺さずにいつまでも自己の複製を作成させることです。
殺してしまっては何の意味もないのです。ですから無害化に向かって進化を始めていることは当たり前のことなのかもしれません。高度可変領域をもつレトロウィルスの進化のスピードはこれまた常識破りの早さです。人が1万年かかって進化するような内容のことをたった20年足らずで完了してしまうそうです。FIVも近いうちに無害化への進化を始めるかもしれません。                               

レトロウィルスは、癌ウィルスとも言われFIVの他にもFeLV(猫白血病)伝貧(馬伝染性貧血)など、人ではAIDS(人のエイズ)ATL(人成人Tリンパ性白血病)などの腫瘍性の病原体となっています。ただしFIVウィルスとは各々属が違います。 

付録
レトロウィルスの癌化のメカニズム:一般的なウィルスは、寄生主の細胞内の蛋白合成過程(ミトコンドリア内の蛋白合成工場を無断拝借する)を乗っ取ることで自己複製を行い、遺伝子までは乗っ取りません。レトロウィルスは自己のRNA遺伝子を逆転写酵素でDNAに転写して、寄生主の遺伝子の中に潜り込ませます。(寄生主の設計図を書き換えてしまう)寄生主の細胞は、いつも通りに蛋白合成しているつもりでも知らぬ間にレトロウィルスの複製を作成していることになってしまいます。これだけなら、他にも行うウィルスもありますが、レトロウィルスが自己の複製DNAを潜り込ませる位置が問題となってきます。哺乳類の遺伝子の中には、生まれながらにして癌遺伝子が存在しています。普段は、この遺伝子は休眠していて悪さをすることはありません。年をとったりいろいろな薬物などで遺伝子にキズでも入らない限り活動を始めません。しかしながらレトロウィルスが複製したDNAがその癌遺伝子の直前に入り込んだらどうなるでしょうか。複製DNAは、どんどん複製ウィルスを作らなくてはいけませんから活性化されています。休眠していた癌遺伝子の前に突然ものすごく元気な遺伝子が入り込んでくることで癌遺伝子も目覚めてしまうのです。このようにして癌化のプロセスが動き始めてしまいます。 


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